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福岡簡易裁判所 昭和53年(ろ)279号 判決

主文

被告人有限会社七田興産を罰金八万円に、

被告人七田良三を罰金一五万円に各処する。

被告人七田良三がその罰金を完納することができないときは、金二千円を一日に換算した期間、同人を労役場に留置する。

訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

当裁判所が認定した罪となるべき事実は、本件起訴状記載の公訴事実(別表(一)、(二)を含む)中、貸付状況一覧表(一)の7項の元利金回収状況欄の「(3)51、3、8一万二、八五〇円」とあるのを金額を「一万一、三五〇円」に、法定利息額欄の「四万四、七九四円」とあるのを「四万五、四九六円」に、超過利息額欄の「七、三二六円」とあるのを「七、一二四円」に、一日当り利率欄に「〇・三六二」とあるのを「〇・三四六」に、右同表末尾合計欄の法定利息額欄に「三六万五、四八一円」とあるのを「三六万六、一八三円」に、超過利息額欄に「三万八、五五九円」とあるのを「三万六、三五七円」に各訂正し、貸付状況一覧表(二)の14項の元利金回収状況欄の「三万四、〇〇〇円」とあるのを「三万三、〇〇〇円」に、超過利息額欄の「一、八九七円」とあるのを「八九七円」に、一日当り利率欄の「〇・七一一」とあるのを「〇・四九四」に、右同表末尾合計欄の超過利息額の「一〇万七、四一九円」とあるのを「一〇万六、四一九円」に、一日当り利率欄に「〇・三一五~〇・七一一」とあるのを「〇・三一五~〇・四九四」に各訂正するほか、右公訴事実と同一であるから、これを引用する。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人七田良三の判示第一(別紙一覧表(一)の1ないし12)の各所為は出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条一項に、同人及び被告会社の判示第二(別紙一覧表(二)の1ないし29)の各所為は同法一三条一項、五条一項に各該当するので、被告人七田良三につき所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は各被告人につき刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告会社を罰金八万円に、被告人七田良三を罰金一五万円に各処し、被告人七田良三においてその罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二千円を一日に換算した期間同人を労役場に留置し、訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して、その二分の一ずつを各被告人に負担させることとする。

なお、弁護人は、公正証書作成費用及び電話加入権質権設定費用は、契約締結に関する費用であり、その実質においても質権設定費用は全部その目的に充てられ、公正証書作成費用はうち一件についてその目的に充てられ、その余の分は約定に従つて各借主に返還したのであつて、貸主の利得とするところではないから、出資法五条五項に定める「みなし利息」には当らない旨を主張するが、同項にいう「貸付に関し受ける金銭」とは、およそ当該貸付に関して貸主が受ける金銭の一切をいい、同項によつて利息とみなされる金銭には費用の実質を有するものをも含み、かつそれが実質費用に充てられたか否かを問わないものと解すべきである。本件についてみると、前掲各証拠によつて金銭授受及びその使用状況の事実関係については、ほぼ弁護人主張のとおりの事実を認めることができるけれども、右の見解に従えば、各借主から貸主に各費用名義で支払われた金銭は、すべて五条五項にいう「みなし利息」に該当すると解するのが相当である。

次に、本件の各費用名義の金銭の受領が、五条三項にいう天引に当るか否かについてみると、前掲各証拠によれば、本件の全部の場合について費用名義の金銭が元本から控除され、残元本のみが借主に交付されたかどうかについては疑問の点もあるが、少なくとも元本交付の直前もしくは直後に、その場で、現金もしくは当事者間の従前の貸借関係で貸主が預つていた費用名義の金銭を今回分の費用に流用するという方法で、費用名義の金銭の授受がなされた事実を認めることができ、右の事実関係の下では、典型的な天引の方法によらない場合であつても、五条三項の脱法行為として、利息の天引と同一視すべきものと解され、本件の各費用名義の金銭は、すべて天引されたものと認めるのが相当である。

ただし、公訴事実別表(一)の7に関しては、公正証書が現実に作成され、その剰余金一、五〇〇円が昭和五一年三月八日ころ借主に返還されたことが認められるので、同項元利金回収欄に、昭和五一年三月八日金一万二、八五〇円弁済とあるのを、これから一、五〇〇円を差引いた金一万一、三五〇円の弁済に修正すべきものであるから、それによる計算の結果は、一日当りの利率は〇・三四六パーセントとなるので、その事実を認定した。

よつて、主文のとおり判決する。

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